現場女子の話

今回は弊社唯一の女子職人について。

結屋の現場紅一点でもありますが、建築業全体で見ても、特に鳶は女性が少ない業種。いくら男女のボーダーがなくなりつつある令和といえど、まだまだハードルが高い環境です。そんな中、彼女が結屋で働きだしてもうすぐ1年が経とうとしています。


というわけで、結屋の大事な女子職人をご紹介★

まずは彼女とのなれそめからお話します。



結屋のお仕事は基本的に、木構造躯体工事、つまり、建造物の骨格を木で組み立てること。

公共工事では細やかな造作工事をすることもありますが、基本的には、「自分の背丈よりも長い木資材を、立てたり、架けたりして、巨大なハンマーで打ち込む!」というダイナミックな作業の日々。

作業を近くで見学してみると、私のはるか頭上の足場に立って金物を取り付けたり、トップ部分が顔のサイズくらいある大きなハンマーを振り上げたりしているわけです。


もともと、工事現場は男性の天下。THE・男の仕事。現在は職業に男女の別を設けることが禁止されていますが、それでもやっぱり、女性には人気がありません。体力的にもハンデがあるし、設備的にも女性に対応していない、課題だらけの業界です。



けれどある日、ひとりの女子から現場作業を見学したいという問い合わせが…。21歳、職人希望?事務じゃなくて?

混乱…

半信半疑のまま、名古屋市内の現場に来てもらうことに。複数の屋外運動スペースを併設した総合公園内の店舗工事の現場です。

テニスコートの前についたとの電話をもらうも、それらしき姿がない。冷やかしか?と思いかけたとき、また電話。「ごめんなさいテニスコートだと思ってたのフットサル場でした;今戻ってます!(←思いっきり反対側)」

…天然だ(^ω^ )

サ●エさんのにおいがする。笑


そんなこんなでようやく現れた彼女は、長い髪の小柄なお嬢さんで…カラコン・ネイルの今時の女子。(今時の女子という概念にそもそも自信がないが、おそらくこれは間違いなく今時の女子だッ!)

というわけで本人を見るも余計に混乱。


作業責任者に託し、一通り現場を見学したり説明を受けてもらったのち、ふたたび合流。

イメージと現実でギャップがあったのでは?

彼女に感想を直撃!

「どう?やれそう?」(無理なんじゃない?みたいなニュアンスで←性格わるぅ、、、)

「大きい工事現場初めてみました!面白そうです!やってみたい!」

まさかの好印象。

しかしなあ…??

「朝は早いし、夏は暑いし、冬は寒いし、汚れるし、材料重いし、大変だよ??」とネガティブキャンペーンを実施し、真意を追求。(疑い深い)

「大丈夫です!」

「夏とか、車の中めっちゃ汗くさいよ?」(ひどい言い様。笑)

「引っ越し屋のバイトしてるんで、慣れてます!」


…めっつよだ!

メンタルめっつよ女子だ!!

え、なんか…向いてそう!!

見た目の可愛らしさに惑わされたけど、この子ってば職人向いてるんじゃないの、、、?


とは言え、まあこの日は見学ですので。

「ご家族とも相談してほしいし、一度ゆっくり考えて、それでも興味があるようなら一度面接をしましょう。また連絡してください」とお伝えしました。

すると、

「働きたい気持ちはもう固まってます。面接日、いま決めてください」

と言うではありませんか。


正直なことを言いますと…

「女性にも頑張ってほしい」という気持ちがありながら、私の中で、「男性の仕事だ」っていう思いがほとんどだったようで。

人手不足だっていうのに、今日の見学現場に向かう途中、「女の子には厳しいはずだから、リアルな現場を見てもらって考え直してもらったほうが彼女のためになるだろう」とか考えてたんです。でもそんなのはいい人ぶった建前で、ただ単に、私だったらやれないって思ってるだけなんですよね…。この子には出来そうとか、出来なさそうとか、偉そうにねえ。反省しました。

この子、テニスコートとフットサル場は間違えるタイプだけど、熱意は本物とみた!!


そんなわけで後日、社長による面接。

やっぱり社長も、あえてシビアなことを伝えて、彼女の真意を推し量っておりましたが…


数分後、その場で採用。

メンタルつよつよ女子の勝利!(茶化してすまん)



そんな彼女も、もう11ヵ月目。

来月で1年です。

相変わらず小柄で華奢で、筋肉なんかついてなさそうなんですけど、足場材(鉄。重い。)をひょいって人に渡したりとかして。

手がふさがるんで、口で金具くわえながらインパクト使ってたりもする。


でもってね、めっちゃ女子のままなんですよ。

ヘアカラーして、エクステつけて、ネイルして、カラコンしてます。野生化していくんじゃないかという予想は外れ、相変わらず見た目にも気をつかって可愛いまま。


そして誰に対しても気さくで物怖じしない性格もあってか、男性チームにすっかり違和感なく溶け込んで、今ではすっかり結屋の主要キャラとして可愛がられています。


つい最近、「私も出張に行きたいです!」と直談判した彼女。

設備的な課題が多く、なかなか出張は難しいということでお願いできていなかったのですが、本人の強い希望により神奈川出張チームに参加。


彼女が結屋で働きだしたことで、今まで漠然としか見えていなかった、「女性の活躍」についての課題が可視化されたと感じています。


「女性が働きやすい環境」というものを改めて考え取り組みもしてきましたが、現状ではやはり、まだまだ全然、整っていない。そう言わざるをえません。けれど改善された部分も確実にあります。少なくとも今の結屋には、女性の職人を偏見なしに笑顔で受け入れる地盤が出来上がっています。その環境は、彼女自身が開拓したものです。


業界全体で見ればまだまだ課題が山積みですが、前例がなければ我々が開拓するしかないですよね。体力的なハンデがないとは言えませんが、そもそも身体能力での圧倒的な壁があるわけではありません。電動工具もあるし、クレーンもありますから。近い将来、女性が大多数を占めるチームが、「より繊細でダイナミックなものづくり」を成し遂げてくれると期待しています。そのために今ある土壌を耕していくのが、我々にできることなんじゃないか、と思う今日この頃。


なんかいい話になってしまった。(自分で言う)

自分にも娘がいるからか、たんに齢を重ねたからなのか、ついつい将来的な話になると壮大になってしまう感ある。


ちなみに自宅で娘と将来についての話になって、ついつい私の話が長くなる時、娘はたったいま全身麻酔から覚めた人みたいな顔でどこか遠くを見ている、ということがままある。悲しみ。


それはさておき、、

こうしてひたむきに頑張っている鳶女子がおりますので、皆さまに、ぜひぜひ温かい目で見守っていただきたい!と思っている結屋です。

まだまだ職人としてはヒヨッコの彼女ですが、向上心ではだれにも引けを取りません!

今後とも、どうかよろしくお願いいたします^^


以上、「現場女子の話」でした。